慈愛が命をつなぐ

 

5年前、私が会社員を辞めて現在の仕事を始めた時、家族は応援というよりは心配の面持ちで私を見ていました。

 

というのも、それまでの私はだいたい2~3年ごとに、自分に有利な条件を提示してくれる会社を選んでは転職し会社員時代を過ごしていましたので、家族の心情としてはやむを得なかったのかもしれません。

 

私は子供の頃から「心配される」ことにものすごく抵抗がある人間でしたので、自分がスピリチュアルの道で自分なりの真実を証明するべく、この世界を探求し携わっていこうと、自分に対して決意表明をした時でもありました。

 

そして5年が経った今、私の仕事に対し懐疑的だった家族は理解を示してくれるようになりました。

 

特に、母とはスピリチュアルの世界について普通に話ができるようになったこと、普通に話が通じるようになったことがとても嬉しいです。

 

その母からある時こんな話を聞きました。

 

今から70年程前、太平洋戦争末期(樺太の戦い)、当時の南樺太には40万人以上の日本人が居住していたそうで、自力脱出者を含めて10万人が島外避難に成功したといわれています-wikipedia「樺太の戦い」より引用-

 

 

私の祖母(母の母)はすでに他界していますが、当時私の祖母も南樺太にいて、自分の幼い子供たち(私の母とその妹、弟)と共に4人で過ごしていたそうです。

母の記憶では、当時の母は5才、母の妹が3才、弟は2才で祖母がおぶっていたそうです。

 

南樺太から北海道までの距離を避難船が出ていたそうですが、その避難船はいつ来るかもわからないような状況で、たとえ避難船が来ても、多くの人が我先にと乗り込むため命がけの争奪戦だったそうです。

 

来る日も来る日も、その避難船を祖母は子供達と共に待ち続けていました。

 

母の記憶では、その寝泊りしていた場所というのが大きな体育館のようなところで、傷痍軍人:しょういぐんじん(戦争で負傷した軍人)の方もいたそうで、祖母は戦争で片足を失った傷痍軍人のオダワラさんという方のサポートもしていたそうです。

 

母は、子供ながらにそこのお手洗いに行くのが怖かったといいます。

和式ですが、両足場の間には真っ暗な空洞があり、そこに汚物が落ちていくようになっていて、いつも自分がそこに落ちてしまわないようはらはらしたと言っていました。

 

 

片足を失ったオダワラさんがそのお手洗いで用を済ませることを不憫に思った祖母は、オダワラさんのお世話を自らしていたそうです。

 

そして、ついに待ちに待った北海道行きの避難船が来ました。

 

母の記憶では、祖母は幼い子供達3人とオダワラさんと避難船に乗り込もうとしましたが、オダワラさんは遠慮して祖母たちに先に行くように促したようですが、祖母はどうしてもオダワラさんも連れて帰るんだと説得し5人で避難船に乗り込もうとしました。

 

しかし、避難船にはすでにてんこ盛りの如く命懸けで我先にと乗り込んだ人たちで満席となってしまい、祖母たちはその避難船に乗ることはできませんでした。

 

祖母たちは、いつ来るかもわからない避難船をまた長い間待つ生活をしました。

 

そして最終的に祖母たちとオダワラさんは、無事に北海道へ帰還することができました。

 

 

月日が経ち、母も大きくなりました。

 

ある日自宅にお客様がみえました。祖母はその男性のことを「オダワラさん」と呼んでいました。

祖母から「オダワラさんだよ」と紹介された母は、あの時のオダワラさんだと思い出したそうです。オダワラさんが結婚することになって、知らないはずの祖母の住所を調べてわざわざ祖母に挨拶をしにいらしたそうです。

 

母は子供の頃から、祖母に会いに来る人たちを見て育ったそうです。

 

家族ではない、知らない人たちが祖母に会いに来ていたのは、祖母が誰に対しても慈悲の心と無条件の愛で接していたからだと、母は年齢を重ねるたびにわかったそうです。

 

ずいぶんと長い年月が経過して、あの時の避難船が実は攻撃に合い沈没したということを知ったそうです。

 

実は祖母たちが乗り遅れた方の避難船は、その後ソ連軍の攻撃の対象となり追撃され全員が亡くなったそうです。

 

祖母がオダワラさんを連れて最初の避難船に乗り遅れたおかげで、全員の命が助かったのです。

 

祖母が自分と自分の子供達だけを連れてその船に乗りこんでいたら、今の私は存在せず、この話を母から聞くこともありませんでした。

 

祖母の慈悲深さにも脱帽しましたが、改めて宇宙の原理や無条件の愛に気づかされた貴重な話でした。

 

 

子供の頃は当たり前として祖母に甘えていた自分が未熟だったこと、そしてそんな自分に対し、いつも無条件の愛で接し与え続けてくれた祖母に、この場をかりて多大なる愛と敬意を表したいと思います。

 

ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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